建物チェック/防水層・鉄部

3.鉄部

鉄部は材料の性質上、どうしても錆が発生してしまいます。立地条件により対候性に違いはありますが、どの塗料を施しても錆は防げません。定期的な塗替えが鉄部の強度を長持ちさせ、美観も守ることができます。塗料の色を変えると、建物の雰囲気が変わりますので面白いかと思います。また、場所によっては異種の材料に変更する事も視野に入れて検討してください。
■共同住宅
 
 
ルーフバルコニーに設置された手すりの根元が錆で腐食し、風化しており、安全を確保するのは困難です。すでに強度はなく、少しの力を加えるだけで簡単に壊れてしまいます。集合住宅なので、子供が居住されている場合は、大変危険です。
 
 
腰窓に安全のために設置してある手摺りです。錆が進行し、保護膜である塗料が風化しています。防水機能がなくなっており、このまま放置しておくと、腐食が進行し手摺の目的である安全性を確保する事は出来なくなります。
 
 
 
階段の上げ裏に錆が発生しています。階段上面の構造が、鉄骨階段の骨組みに床面をモルタルで仕上げており、モルタル面の踏面と鉄骨面という異種の組み合わせにより、ひび割れや隙間が発生しやすく、また、排水経路が確保されていないのも、大きな要因です。雨水等が床面に溜まっていたり、ひび割れより浸水してり鉄骨階段がさびてしまっている状況です。発錆面を施工するのは当然のことですが、その前に発錆の原因である浸水部位を補修し、漏水を解消してからでなければ、すぐに同じような状況になります。
 
 
この写真は左記に掲載してあります鉄骨階段の上面部分です。鉄骨階段の骨組みの床面にモルタルを施した仕上げになっています。外階段によくある工法です。ご覧のように、床面のモルタルと鉄部の蹴上面との取り合いに発錆が見受けられます。これは、雨水等が床面の元側に溜まるため、錆びてしまっていると考えられます。構造上、雨水を排水する溝がなく、勾配やモルタルのひび割れなどが主な原因です。鉄骨階段の構造上、防水処理だけではすべてを改善する事は難しいかと思います。
 
 
 
共用階段の手摺が錆びてコンクリート内部で膨張し、外部のコンクリートが欠損している状況です。異種の材料を使用しているので、どうしても取り合いの部分に負荷が加わり、放置しておくとこのような状況になってしまいます。コンクリート床面の下地補修や防水、手摺の塗装等をもう少し早い段階で施していれば、避けられます。
 
 
天井に取り付けられているよく見る逆富士型の共用灯です。コストが安く、メンテナンスが楽なので、共同住宅にはよく使われます。鉄製で外気にさらされているので、錆びやすく、特に換気口付近に設置されている場合、熱気などにより発錆の進行が著しいようです。コマ目に塗り替え事が多いですが、場合によっては器具を取り替える選択もあります。
 
 
 
屋上に設置されている出入りのために設けられたハッチです。鉄製で常に外部にさらされており、発錆の進行が著しい部位です。コマ目に塗り替えるか、錆びない材質のハッチ(ステンレス製・アルミ製等)に取替える必要があります。
 
 
共同住宅の地下部分に設置されている消防設備である送水管バルブの写真です。水道料金が通常より多く発生しているので、調査した結果、この部分より漏水していました。腐食がかなり進行しています。
 
 
 
ベランダに設置されている消防法で定められた避難用のハッチです。鉄製なので錆が発生している状況です。もしもの場合を考えると、錆びない材質で開閉のスムーズな器具に取り替えることをお勧めします。
 
 
左記のハッチを開けた内部の写真です。見事に腐食しており、開閉が困難です。ハッチ廻りの防水性が乏しく、雨水が浸水したのが原因です。
 

4.内装

室内は、住む人により使い方が様々です。家族構成・年齢・目的によりライフスタイルに求められる間取りや機能も異なりますので、それぞれの目的に合ったプランが必要になります。賃貸住宅の場合は、地域性により住まわれる年齢層や家族構成が異なるので、入居率・家賃を視野に入れて事前に調査して計画をしましょう。
■集合住宅のリニューアル
 
 
既設の台所の写真です。台所に独立性がなく、ダイニングキッチンと同じスペースになっており、使い勝手や動線が悪く、今のニーズにあっていません。台所用品や冷蔵庫等も壁面に沿って置くことしかできず、リビングでの快適な生活スペースは確保できません。
 
 
洗面台の幅が600なのでファミリータイプであれば、もう少し大きくて収納もあるタイプが喜ばれます。給水も混合水洗より、シングルレバーが一般的です。ただし、既設の状況により、一回り大きい洗面台が入らない場合もあるので、検討が必要です。
 
 
 
賃貸物件の室内です。玄関を入ってすぐに台所とトイレ及び洗面台・浴室が隣接している間取りです。来客があった場合、玄関口ですべて見渡すことができるので、現代のようにプライバシー性の確保が要求される時代では、人気がなく、入居率にも大きく影響してきます。限られたスペースの中での間取り変更は、かなりの制約があり、なかなかすべての条件を満足させるのは、非常に難しい課題です。
 
 
既設の収納スペースであるクローゼット内部に結露が発生し黴が付着している状況です。クロスを躯体に直貼しているのも、結露しやすい原因になっています。対処法としては、当然、入居者の使い勝手も重要になりますが、結露を起きにくい状況にする事も必要です。一般的な方法としては、既設の壁面にもう一層壁面を設け、内部に断熱材を入れ込むことが多いのですが、デメリットとしてその分スペースが狭くなってしまいます。
 
 
 
和室との扉が、LDK側も襖仕上げになっており、洋室とはミスマッチです。独立性を考えると、間取り変更も視野に入れたプランや少なくとも美観的にLDK側は異種の仕上げに変更した方がいいですね。
 
 
床や壁面の表面材(クロス・クッションフロア)が汚れており、日頃からきれいに便器や便座を掃除していても、清潔に見えません。来客に対する配慮や抗菌面も考え、いろいろな機能をもった表面材に貼り替えたほうが良いかと思います。